ザルツブルク音楽祭2008レポ 第4回<魔笛>

2008年11月14日

男の隠れ家 ONLINE

『男の隠れ家 ONLINE』にて「大人の男のためのオペラ入門塾」連載中の上月氏が、08年度ザルツブルク音楽祭より、公演の数々をレポート!その第4回。

第4回<魔笛>

今回は、モーツァルト晩年の傑作「魔笛」の再演。2008年8月21日の公演より。


▲夜の女王とモノスタトス
(c)Clärchen Baus-Mattar & Matthias Baus

「魔笛」に関しては、モーツァルトとオペラ・第6回(2008年2月29日)でも詳しく説明したのでストーリーなどは省くが、モーツァルトが死去した1791年、最後に完成させたジングシュピール(独:歌芝居)である。ドイツ語圏では圧倒的に上演回数が多いオペラとして親しまれている。

さてこのプロダクションはモーツァルトイヤーの2006年に指揮のリッカルド・ムーティと演出のピエール・アウディというコンビで発表されたプロダクション。実は「魔笛」は、2005年の音楽祭に巨匠グレアム・ヴィックが造った舞台を2006年のモーツァルトイヤーにも使う予定だった。しかし、ザラストロの教団が老人ホーム、ザラストロはそこの院長、タミーノは半ズボンにスニーカーというハチャメチャなものだったので、観客、マスコミに酷評され、急遽造られたのが、このアウディの舞台だった。


▲魔笛の劇場は音楽祭のメイン会場、祝祭大劇場
(c)Clemens Kois

アウディはベイルート生まれの英国人で、アムステルダムなどで活躍している演出家。この「魔笛」は、カラフルな原色をふんだんに使った動物や草木の置物が舞台狭しと踊りまくり、ちょっと不気味なおとぎ話という趣になっている。

2幕では大きな長方形を重ねてピラミッドに見立てたような舞台装置の中ででオペラが進行していく。この舞台も決して悪くはないが、私個人的には、ヴィックの前のアヒム・フライアーの演出で、フェルゼンライトシューレ全体をサーカス小屋にしてしまい、登場人物がピエロや大道芸人というステージの方がメルヘン的で良かったと思うが。


▲メンヒシュタインの丘から祝祭歌劇場を望む


▲祝祭劇場前からホーエンザルツブルク城を望む


▲タミーノと3人の侍女
(c)Clärchen Baus-Mattar & Matthias Baus

歌手陣はかなり変わったが、ザルツブルクではお馴染みの顔ぶれ。ザラストロはバスのフランツ・ヨーゼフ=ゼーリヒ、タミーノはテノールのミヒャエル・シャーデ、パミーナにソプラノのゲニア・キューマイヤー、パパゲーノにバリトンのマルクス・ウェルバという実力派が一同に集まった。

それぞれに良い持ち味を出していたが、特に良かったのが、キューマイヤー。地元ザルツブルクの生まれで、モーツァルテウム音楽院出身という地元の星。ウィーンフィルの「ブラームスのドイツレクイエム」の時にも触れたが、ノーブルな歌唱にコントロールの効いた美声は、今後の活躍がますます楽しみである。


▲パパゲーノとパミーナ
(c)rchen Baus-Mattar & Matthias Baus

その中で、唯一新しい発見だったのが、夜の女王のアリビナ・シャギムラトーヴァ。ロシア生まれの超新星のコロラトゥーラ・ソプラノだが、堂々とヴェテランたちと渡り合っていた。まだまだ若く、硬さも見られたが、アクートだけなら2006年のディアナ・ダムラウよりも強いくらいで、2007年のチャイコフスキー国際コンクールの声楽部門で優勝した実力は本物である。

オーケストラはウィーンフィル、合唱はウィーン国立歌劇場合唱団、3人の童子はウィーン少年合唱団というのはいつものメンバー通りだが、ムーティのタクトの下、実に完成度の高い世界最高峰の「魔笛」を聞かせてくれた。


▲3人の童子たちは空を飛ぶ
(c)Clärchen Baus-Mattar & Matthias Baus

上月 光コウヅキ ヒカリ
(コラム:大人の男のためのオペラ入門塾)
イタリアン・スーツに身を包み、イタリアワインを飲み、ACミランを熱狂的に応援し、イタリア・オペラを愛す。音楽ツアー専門の旅行代理店を経営。初心者をオペラの世界に引き込む話術に定評あり

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